ハゲカケらんなーこと私は、とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年ほどの勤務経験があります。
仕事柄、住宅業界の情報や、国の最新の動向などに触れる機会が多いです。
また、住宅に係る色々な制度や基準を取り扱います。
一方で、多くの方はそのような情報に触れる環境にはいません。
家づくりをしようと思って初めて勉強を始める場合が多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは、これから家づくりをしようと考えている方に向けて、私が考える家づくりのアプローチについてまとめていきます。
参考にしていただければ幸いです。
最低限の法律の知識を取得しておく
多くの方にとって、住宅に関する法律は、家づくりをしようとする場合に初めて触れるものだと思います。
法律を知らなくても、ハウスメーカーや工務店にまかせておけば家自体は建ちます。
ただ、その家の性能や安全性に関係するものや、建て主であるあなたを保護するものについては、最低限の知識として知っておくべきです。
家の性能や安全性に関係する法律としては「建築基準法」
建て主を保護する法律としては「住宅瑕疵担保履行法」
この2つの法律について、もちろん詳細に把握する必要はありませんが、どのようなことが規定されているかは知っておきましょう。
土地に潜むリスクを洗い出す
まず、住宅を建てるために必要な土地を選ぶ際に注意すべき情報ですが、基本的に土地を新たに購入する場合は、宅地建物取引業者から購入するか、宅地建物取引業者の媒介によって購入する場合が多いと思います。
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明を行う関係上、その土地の状況を調査していますので、その情報をよく確認します。
一方で、宅地建物取引業者からの情報だけではなく、自分でも公表資料を確認する他、現地に足を運んで資料からだけでは分からない情報を取得します。
なお、現地確認は、日時を変えて複数回行います。
これにより、平日、休日の違い、時間帯による状況の違いを把握することができます。
土地選びに時間をかけることが可能であれば、季節による違いも確認できればなおいいです。
確認すべき公表資料
- 市区町村が作成するハザードマップ
- ゆれやすさマップ
- 大規模盛土造成地マップ
現地で確認すべき土地の状況
- 道路からのアクセス
- 道路の交通量
- 周辺の建物の状況(規模や老朽度、居住者)
- 日当たりや通風など
住宅の性能は「長期優良住宅+α」
土地が決まったら、まず決めるべきなのが住宅の性能です。
住宅の性能は、後から変えることが困難ですから、最初に決めておく必要があります。
予算の関係で削らなければいけないところが出た場合でも、性能を落とすことはおすすめしません。
設備や内装のランクを落とすなどで対応しましょう。
住宅の性能のレベルは「長期優良住宅」の認定基準をベースに設定します。
長期優良住宅とは、概ね3世代(75年から90年程度)に渡って住み続けられるよう、耐久性、耐震性、省エネ性、メンテナンス性などに配慮された住宅です。
長期優良住宅の基準は平成20年に作られたものですので、一部の基準については物足りないものとなっていましたが、令和4年10月1日から新たな認定基準が施行され、基本性能が向上しました。
ただ、次の2つの基準については、さらなる基準の上乗せを検討したいところです。
- 省エネルギー性能
- バリアフリー性能
省エネルギー性能を上乗せする理由
長期優良住宅の認定基準では、省エネルギー性能について「断熱等対策等級5」及び「一次エネルギー消費量等級6」が設定されています。
この基準は、ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準相当となります。
令和4年10月1日から、基準が改正されています。
改正前は「断熱等対策等級4」が設定されていました。
従前の基準である断熱等対策等級4というのは、住宅の外皮(壁、屋根・天井、窓など外気等に接する部分)について、現行の省エネルギー基準(建築物省エネ法に基づくエネルギー消費性能基準)を満たすこととされています。
現行の省エネルギー基準は平成28年に制定されていますが、外皮の基準については1999年(平成11年)に決められた通称「次世代省エネルギー基準」と変わっておらず、かなり古い基準が適用されていました。
令和4年10月1日からは、省エネルギー性能が「断熱等対策等級5」を満たすこととされ、一次エネルギー消費量等級への適合が必要になりました。
ただ、私が今新築で建てるなら、断熱性能は妥協したくないのでHEAT20のG3(現行の断熱等対策等級7)を目標にします。
断熱性能は高ければ高いほどよく、断熱性能を高めるコストはそこまで大きくありません。
断熱性能が高ければ光熱費の削減や健康の維持にもつながります。
省エネルギー性能の基準については、別記事でまとめていますので、そちらをご確認ください。
なお、太陽光発電設備などの創エネルギー設備の設置は後回しです。
太陽光発電設備を設置する余裕があるなら、その費用を断熱性能の強化に充てます。
愛猫の健康にもメリット
住宅の断熱性能の向上は、愛猫の健康にもメリットがあります。
人と猫は、快適に生活できる室温がほぼ同じであり、人が快適に暮らせる住宅は、猫にとっても快適と言えます。
また、同じ部屋でも天井付近と床付近では温度に差が生まれてしまいます。
これらの温度差は人にとっても不快であり、体への負担(ヒートショック)も大きいです。
猫は人よりも体が小さいですし、高いところと低いところを頻繁に移動しますので、温度差の影響を受けやすいと言えます。
断熱性能を向上させることで、室間や室内の温度差を少なくすることが可能です。
バリアフリー性能を上乗せする理由
一戸建ての住宅の場合、長期優良住宅にはバリアフリー性能は求められていません。
一方で、人生100年時代と言われ、体が衰えてからの年数も長くなっています。
年を取ってからの生活も考えておかなければなりません。
バリアフリー性能については、住宅性能表示制度の高齢者等配慮対策等級が参考になります。
高齢者等配慮対策等級は、等級1から等級5まであり、等級5が最高等級になりますが、等級3を満たすことがひとつの目安です。
各等級がどのような性能を有しているかは次の表のとおりです。
等級 | 性能 |
5 | a 移動等に伴う転倒、転落等の防止に特に配慮した措置が講じられていること。 b 介助が必要となった場合を想定し、介助用車いす使用者が基本生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられていること。 |
4 | a 移動等に伴う転倒、転落等の防止に配慮した措置が講じられていること。 b 介助が必要となった場合を想定し、介助用車いす使用者が基本生活行為を行うことを容易にすることに配慮した措置が講じられていること。 |
3 | a 移動等に伴う転倒、転落等の防止のための基本的な措置が講じられていること。 b 介助が必要となった場合を想定し、介助用車いす使用者が基本生活行為を行うことを容易にするための基本的な措置が講じられていること。 |
2 | 移動等に伴う転倒、転落等の防止のための基本的な措置が講じられていること。 |
1 | 移動等に伴う転倒、転落等の防止のための建築基準法に定める措置が講じられていること。 |
等級3から、介助用車いす使用者の生活に配慮することが求められており、等級2と3では住宅内のバリアフリー性能に大きな差が出てきます。
また、住宅金融支援機構が販売する住宅ローンである【フラット35】では、金利の引き下げを受けられる条件のひとつとして、高齢者等配慮対策等級3を満たすことが必要となっています。
住宅金融支援機構は政府出資100%の金融機関であり、【フラット35】が設定する条件は、政府が考える「優良な住宅」の条件とも捉えられます。
これらのことから、高齢者等配慮対策等級3以上をお勧めします。
住宅の施工者は「地域工務店(地元の工務店)」で
私が住宅の施工を依頼するなら、地域工務店(地元の工務店)から選びます。
ハウスメーカーは仕様がある程度決まっていますので、ハウスメーカーが提示する選択肢の中から選ぶという形になります。
住宅の性能もハウスメーカーや取り扱っている商品によって決まってしまいます。
一方で、地域工務店であればイチから設計に携われます。
私の場合は、仕事柄、ハウスメーカー以上の断熱性能にこだわり、地域産材を活用した住宅を作っている地元の工務店を知っています。
地域工務店は情報が埋もれていて探しにくいのも事実ですが、探す方法はあります。
地域工務店であれば、メンテナンスを含め長くお付き合いをすることもできます。
住宅ローンの借り入れは「ネット銀行」で
私は、新築ではなく中古住宅をリフォームして住んでいますが、住宅ローンを組みました。
新築ではなく、店舗併用住宅でかなり古い家だったことなどもあり、融通の聞きそうな地銀で住宅ローンを組みましたが、手続きをするのに何度も銀行に通わなければなりませんでした。
今、住宅を新築するのに住宅ローンを組むのであれば、迷わずネット銀行から選びます。
一度も銀行に行くことなく手続きが可能ですし、金利も低いです。
必要な書類などで不明な点があればメール等で問い合わせ出来ますし、特に不都合はないと思います。
実際に、借り換えを検討した際にメールで問い合わせをしたところ、数時間後には回答をもらえました。
住宅ローンの借入先で迷った場合は、モゲチェックで最適な借入先を選ぶのがオススメです。
簡単な情報を入力するだけで、オススメの借入先を教えてくれます。
また、借入先によっては必要書類の準備などのサポートを受けることも出来ます。
家は建ててからのメンテナンスが重要
住宅は建てて終わりではありません。
適切なメンテナンスを行わなければ、住宅の劣化は早くなってしまいます。
浅いうちに対処すれば大事に至らない傷も、放置すれば致命傷になることもあります。
また、物置やカーポートの設置、DIYでの小屋造りなど、知らないうちに法律違反を犯してしまうことも…
よくある法律違反の事例についてまとめていますので、そちらも御参照ください。
家づくりは他人まかせにしてはいけない
住宅は多くの人にとって、一生に一度で人生最大の買い物です。
その買い物をハウスメーカーや工務店の言いなりで建ててしまってよいのでしょうか。
建ててしまってから「こうすればよかった」と思いたくないですよね。