家を建てようとする多くの方は、「ハウスメーカー」で家を建てます。
2020年の戸建て住宅の着工戸数は約13万戸。
このうち、大手ハウスメーカーの着工戸数は約5万9千戸(住宅産業新聞社調べ)です。
日本の戸建て住宅の約半分は、大手ハウスメーカーにより建てられています。
また、フランチャイズ型のハウスメーカーも加えれば、日本の戸建て住宅の大部分はハウスメーカーにより建てられていると言えます。
では、ハウスメーカー以外で家を建てている人はどのように建てているのか。
それは、地域工務店で建てているのです。
ここで言う地域工務店とは、フランチャイズ型のハウスメーカーの傘下ではなく、独自の家づくりをしている工務店のことです。
営業範囲としては、「本社がある都道府県+隣県」程度でしょうか。
かく言う私も、地域工務店で家づくりをしました。
家づくりと書いたのは、私の場合は新築ではなくて中古を買ってリフォームでしたので。
その経験も踏まえて、地域工務店で家を建てるメリット・デメリットをまとめたいと思います。
地域工務店で家を建てるメリット
地域工務店家を建てる場合のメリットは、次のものが挙げられます。
- 自由設計
- 独自のこだわり
- 地域内でのお金の循環
自由設計
ハウスメーカーの場合、部材を規格化していますので、設計に一定の制限があります。
間取りや開口部の位置、窓や外壁の仕様、内装の仕様など、「提示されたものから選ぶ」ことになります。
イメージとしては、新車を購入するのに似ていますね。
まず、大きさや性能から車種を選んで、内装やオプションを選ぶみたいな。
もちろん、家の場合は車よりも選ぶものは多いですが。
一方で、地域工務店で家を建てる場合は、完全に自由です。
地域工務店からの提案はありますが、基本的には建て主がイチから設計に関われます。
間取りはもちろん、天井の高さや構造材の材種や産地、屋根や外壁の素材、断熱材の種類、内装の仕上げなどなど、全て自由に決めることができます。
注意
基本的には自由に設計できるのですが、構造については決められない場合があります。
例えば鉄筋コンクリート造で家を建てたい場合は、地域工務店で対応できるところは少ないです。
地域工務店で家を建てようとする場合は、構造は木造であることが基本です。
独自のこだわり
地域工務店には、独自のこだわりがあることが多いです。
例えば、断熱性。
ハウスメーカーよりも高い仕様を標準としている地域工務店は結構あります。
他の例を挙げると、地域産材の活用。
地域産材の活用を謳っている地域工務店は、木の使い方を熟知していますし、内装にもふんだんに取り入れます。
ハウスメーカーでは、地域産材を活用した設計は難しいです。
地域工務店は、地域の風土に合った家づくりをしており、それが独自性=こだわりになっています。
地域内でのお金の循環
地域工務店で家を建てる場合、地域工務店にお金を払うことは地域にお金を落としていることになります。
あなたが支払った代金は、地域工務店で働く従業員の給料となり、その給料は、地域のスーパーなどで使用されます。
地域のスーパーなどで使われたお金は、スーパーなどで働く従業員の給料になります。
スーパーなどで働く従業員が地域工務店で家を建てれば、その代金は地域工務店に支払われます。
…というように、地域内でお金が循環していきます。
もちろん、全てが地域内で完結するわけではありません。
〇EONとか〇NIQLOでお金を使えば、大手企業に持っていかれます。
でも、そこで働く従業員は地域住民な訳ですから、一部は地域に残ります。
これが大手ハウスメーカーだと異なります。
大手ハウスメーカーでも、実際に工事をするのは地域の建設会社や工務店です。
でも、多くのお金は大手ハウスメーカーのもとに渡ります。
そして、大手ハウスメーカーで働く従業員の給料になり、地域の外で使われます。
つまり、地域からお金が流出するということです。
地域工務店で家を建てるデメリット
一方で、デメリットもあります。
- 探しにくい
- 技術力以外に難あり…かも
探しにくい
まず、地域工務店は探しにくいです。
これが大手ハウスメーカーで家を建てる人が多い理由です。
例えば、WEBで「○○県 工務店」で検索しても、上位表示されるのは大手ハウスメーカーか、フランチャイズ型の地域工務店です。
純粋な地域工務店の情報を得ることは困難です。
地域工務店のHPを見ようと思ったら、ピンポイントでその工務店の名称で探さなければなりません。
また、そもそもHPを作っていない地域工務店も結構あります。
地域によっては、その地域で作っている住宅雑誌があったりしますので、そういったもので情報を得るか、口コミで情報を得るしかないのが実態ではないかと思います。
技術力以外に難あり…かも
これは私の体験談になりますが、私は中古住宅を購入し、そのリフォームを地域工務店に依頼しました。
予算内でリフォームをするために、見積りを出してもらいましたが、その見積りが間違いだらけ。
床面積が違う、外壁の面積が違う、断熱材の仕様が違うなどなど、数えればきりがないくらいいい加減な見積り。
そして、なぜかそこを修正しても総額に変更がないという…
工事中も、打ち合わせと異なる施工をしたり、工期が半年以上伸びたり、かなり大変な思いをしました。
ただ、出来上がった家は満足しています。
大工さんの腕は良かったですので。
私がはずれを引いたという可能性も否めませんが、地域工務店の場合は、腕はいいがそれ以外に難ありという場合もありそうです。
いろいろ大変な思いをするかもしれませんが、私は地域工務店で家づくりしたことに後悔はありません。
地域の風土に合った家づくりを知っているのは地域工務店ですから。
メリット・デメリットを理解した上で選択してください。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】