どんな家を建てるかを決める前に、どこに家を建てるかを決めなければなりません。
土地選びですね。
駅からの距離、生活必需品を購入できるお店や学校、病院などの立地状況などは、皆さん気にされると思います。
一方で、その土地の安全性についてはどうでしょうか。
土地の安全性については、公的に公表されている資料で概ね確認することができます。
購入する場合はもちろん、親などから譲り受ける場合においても、その土地の安全性を確認しておくことは重要です。
場合によっては、住宅の構造やプランニングに影響してきます。
それでは、どのような資料を確認すべきか、解説していきます。
市区町村が作成する防災ハザードマップ
近年、大雨による河川の氾濫や土砂災害による被害が毎年のように発生しています。
そのような災害で、もし建てたばかりの住宅に被害があった場合、精神的・経済的な負担が大きくなってしまいます。
そこで、その土地にどのようなリスクがあるかを把握するために役立つのが、市区町村が作成するハザードマップです。
ハザードマップにはいくつかの種類があります。
市区町村によって掲載されている内容は異なりますが、概ね共通して次のものが作られています。
- 土砂災害ハザードマップ
- 津波、高潮または河川浸水ハザードマップ
これらのハザードマップがどういった危険性を示しているのか、順番に解説していきます。
他には、火山ハザードマップなど地域特性に応じたハザードマップが作成されています。
また、国土交通省のハザードマップポータルサイトでは全国のハザードマップの作成状況などを確認することができます。
土砂災害ハザードマップ
近年、「50年に一度の大雨」が毎年どこかの地域で発生している印象がありませんか。
地球温暖化の影響なのか、雨の降り方が変わってきていますよね。
そして、この大雨に伴う土砂災害による被害が頻発するようになりました。
ここ最近では、広島や熱海の土砂災害が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
そいうった土砂災害のリスクを把握することができるのが、土砂災害ハザードマップです。
この土砂災害ハザードマップには、次の区域が記載されています。
- 土砂災害特別警戒区域(
レッドゾーン) - 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
土砂災害には次の2つの種類があります。
- 急傾斜地の崩壊によるもの
- 土石流によるもの
この2種類の危険性を調査し、その危険度によって色分けしたものがレッドゾーンとイエローゾーンです。
レッドゾーンの方が危険度が高く、基本的に人が常時使用するような建物を建てることは推奨されない区域であり、居室を有する建築物を建てようとする場合は建築基準法において構造制限が設けられています。
イエローゾーンには法的な制限はありませんが、注意すべき区域ということです。
津波、高潮または河川浸水ハザードマップ
東日本大震災では、大地震に伴い発生した津波により、多くの建物が飲み込まれ、多くの人命が失われました。
発生が危惧されている南海トラフ地震においても、広範囲に津波被害が想定されています。
また、土砂災害ハザードマップの解説でも触れましたが、近年の雨は、一度に降る量がこれまでよりも多くなってきています。
これにより、河川が氾濫して町が水没する被害が続出しています。
最近では、長野県の千曲川や熊本県の球磨川の氾濫が記憶に新しいところです。
このような水害のリスクを示したものが浸水ハザードマップです。
浸水ハザードマップでは、浸水の範囲や浸水の想定深さが示されています。
基本的には浸水区域は避けた方が望ましいですが、場合によっては町のほとんどが浸水区域になってしまうということもあるかもしれません。
その場合は、1階を車庫にして2階を居住スペースにするなど、プランニングで対応する方法もあります。
ゆれやすさマップ
地震は、地面から数十㎞の深いところが震源です。
そこで発生した振動が、地面に向かって伝わってくる訳ですが、伝わってくる地盤の性質により揺れの強さ(=震度)が変わってきます。
地震の振動が伝わってくる地盤を表層地盤と言いますが、この表層地盤の性質が揺れの強さに関係してきます。
簡単に言うと、表層地盤が固いほど揺れの強さは小さくなります。
例えば、ひとつの大きめのお皿に、焼きプリンとプッチンプリンが乗っているとします。
一般的に、焼きプリンの方がプッチンプリンよりも固いですよね。
プリンの上にはそれぞれ旗が立っています。
お皿を揺らした場合に、どちらの方が旗の揺れが大きくなるでしょうか。
プッチンプリンの方が揺れが大きくなることは容易に想像できると思います。
それと同じ原理です。
震源がお皿で、プリンが表層地盤です。
この表層地盤のゆれやすさを示したものが、ゆれやすさマップです。
ゆれやすさマップは、防災科学技術研究所のホームページで公表されています。
また、より詳細なマップを個別に公表している自治体もありますので、自治体のHPを確認してみることをお勧めします。
大規模盛土造成地マップ
新潟県中越地震や東日本大震災などで、谷や沢を埋めた造成宅地又は傾斜地盤上に腹付けした大規模な造成宅地においてがけ崩れや土砂の流出等の被害がありました。
このことから、大規模盛土造成地の有無について全国的に調査が進められ、大規模盛土造成地が有る場合は、マップの作成が進められました。
調査及びマップの作成は令和2年3月30日に完了しており、国土交通省ホームページ及び各自治体のホームページなどで公表されています。
なお、大規模盛土造成地に該当するからと言って、必ずしも危険性が高いという訳ではありません。
まとめ
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に住宅を建てることは避けるべきですが、住宅を建てようとしている土地にどのようなリスクがあるのかは把握しておくことは重要です。
そのリスクを受け入れることができればそれでいいですし、住宅の構造やプランニングを工夫することでリスクに対処することもできます。
知らないということが最も怖いことです。
国土交通省から、土地利用規制や防災情報がまとめられた不動産情報ライブラリというサービスが提供されています。
ある程度の情報をこのサービスで取得できますのでおススメです。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】