最近、また太陽光発電設備ブームが到来しそうな雰囲気です。
2009年にFIT制度(固定価格買取制度)が開始された時に、政府や自治体の補助金が導入されたこともあり、太陽光発電設備ブームが起きました。
その後、買取価格の低下がありブームは一度落ち着いていたところですが、「パリ協定」からの政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」に基づく施策として、太陽光発電設備への注目度が高まっています。
環境省の「太陽光発電の導入支援サイト」では次のとおり記載されています。
「エネルギー基本計画」では、2030年度の電源構成として再エネ導入目標を36~38%(2019年度:18%)としており、そのうち太陽光は14~16%(2019年度:6.7%)とされています。このためには、太陽光発電の累積導入量を 103.5~117.6 GW(2019年度:56 GW)まで増やす必要があります。
https://www.env.go.jp/earth/post_93.html
今後、政府や自治体の太陽光発電設備設置に対する補助金が増加することが見込まれます。
よし!
我が家の屋根にも太陽光発電設備を設置にゃ!
と思う方もいらっしゃるかと思いますが、一度落ち着いてください。
太陽光発電設備を設置する前に、他に優先すべきことがないでしょうか。
今回は、太陽光発電設備を設置する前に知っておくべきことについてまとめていきます。
住宅の省エネ対策は太陽光発電設備だけではない
住宅の省エネルギー性能は、次の2点で評価されます。
- 外皮(壁・屋根・天井など)の断熱性能
- 住宅が使用するエネルギー消費量
太陽光発電設備を設置することで、②の住宅が使用するエネルギー消費量を低減することができます。
つまり、光熱費を削減することができるということです。
ただ、太陽光発電設備を設置するには初期投資が必要です。
よって、光熱費の削減分は初期投資を回収しているに過ぎません。
太陽光発電設備の設置には、太陽光パネルの枚数によりますが数百万円の初期費用がかかりますので、初期投資を回収するまでにはそれなりの期間が必要です。
また、当然ですが、太陽光発電設備を設置しただけですので、生活環境に変化はありませんし、使用するエネルギー量自体も変わりません。
- 太陽光発電設備を設置することによる効果まとめ
- 住宅が使用するエネルギー量は変わらない(=生活の質は変わらない)が、太陽光発電設備が創り出すエネルギーにより、エネルギー消費量を相対的に削減できる。
一方で、①の外皮の断熱性能を向上させ、住宅が使用するエネルギー量を減少させることで、住宅のエネルギー消費量を削減することもできます。
いわゆる断熱改修です。
断熱改修は、住宅内外の熱の移動を少なくすることで、室温を適正に保つために必要なエネルギー使用量を削減します。
また、断熱改修をすることで、室内の各部分の温度差(例えば室内の天井付近と床付近)が少なくなり、温度差による人体へのストレス(ヒートショック)を軽減する効果もあります。
- 断熱改修をすることによる効果まとめ
- 住宅が使用するエネルギー量を減少させることで、消費エネルギーを削減するとともに、住宅内の温熱環境を改善する(=生活の質を向上する)ことができる。
太陽光発電設備の設置と断熱改修では、消費エネルギーを削減するという効果は同じですが、断熱改修をする方が「住環境の改善」というメリットが付加されます。
窓の断熱改修は最もコスパが高い
断熱改修と言うと、壁や天井を壊して断熱材を入れるという大掛かりなものを想像する方も多いと思います。
確かに、そこまですれば大きな効果を得られることは間違いありません。
ただ、そこまでするとかなりのお金がかかります。
そこでおすすめしたいのが、窓の断熱改修です。
現行の省エネ基準のうち、断熱性能に関する基準(断熱等性能等級4)は、平成11年につくられた「次世代省エネルギー基準」と変わらないことは以前の記事でお伝えしましたが、現行基準における断熱性能を有する住宅においても住宅の熱の流入・流出の量が最も多いのが窓です。
住宅の熱の流入・流出の大半が窓などの開口部と言われています。
住んでいる住宅の省エネルギー性能は分からないことが多いと思いますが、冬に窓に結露が生じるような場合は窓の断熱性能が不足しています。
よって、窓の断熱改修は、熱の流入・流出の量を大幅に低減することが可能です。
また、窓の断熱改修は、内窓を付けるという簡単な方法でできますし、費用もそこまで大きくありません。
窓の断熱改修は、最もコストパフォーマンスの高い断熱改修と言えます。
太陽光発電設備を設置する前に、少なくとも窓の断熱改修は行って欲しいところです。
(まとめ)太陽光発電設備を設置する前に
太陽光発電設備を設置すれば、確かに住宅のエネルギー消費量の削減(=光熱費を削減)することはできます。
一方で、断熱改修をする方が、エネルギー消費量の削減と共に、生活環境を改善させることも可能です。
太陽光発電設備を設置しようとする前に、最低限窓の断熱改修だけは行うことをお勧めします。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】