これから家づくりをしようとされている方の中には、既に家族の一員として猫がいて、猫のための家づくりをしようとしている方もいらっしゃると思います。
また、家づくりをした後で、新たに猫を家族に迎え入れようとしている方もいらっしゃるでしょう。
猫のための家づくりと聞くと、キャットウォークを設けたり、猫がくつろげる場所を設けたりということを思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろん、そういったことを考えることも必要です。
ただ、設置したキャットウォークを猫が使ってくれるとは限りませんし、せっかく設けた寛ぎスペースを猫が気に入らないかもしれません。
猫の行動や嗜好は読めませんので、最初から作り込んでも、それが無駄な出費になる可能性もあります。
キャットウォークや寛ぎスペースは後からでも設置できます。
まずは、新しい環境に慣れさせて、新しい環境での猫の行動を観察してからでも遅くはありません。
一方で、後から変えようと思っても簡単には変えられないものがあります。
猫と快適に暮らすためには、後から変えられないものについてじっくり検討しておくことが重要です。
ここでは、次の項目についてまとめていきます。
- 住宅の断熱性能
- 住宅の内装仕上げ
猫は温度変化に敏感
ハゲカケらんなーこと私の家には3匹の猫がいます。
- 長女:サチ(8歳)
- 次女:メチャ(8歳)
- 三女:シロ(2歳)
サチとメチャは人間で言うと45歳前後で、まだまだニャン生はこれからですが、体調にも気を付けていかないといけない年齢です。
最近、サチが体調を壊すことがありました。
体調を壊すタイミングは、季節の変わり目で、気温が大きく変化した時です。
症状としては下痢と嘔吐。
1日安静にしていれば次の日にはケロリとしているのですが、最初は驚きました。
若い時は平気でも、年齢を重ねてくると体への負担が大きくなってくるようです。
人間と同じですね。
室内の温度差を低減させるためには住宅の断熱化は必須
温度差は、考えている以上に体への負担があります。
ヒートショックという言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
よく言われるのが、冬の寒い時期の暖房室と非暖房室(例えばリビングと廊下)の温度差による急激な血圧の変化です。
人間であれば、ヒートショックによって、脳内出血や脳梗塞、心筋梗塞が誘発されます。
体が体毛に覆われているとはいえ、猫は人間よりも体が小さく、急激な温度変化は体への負担は少なくありません。
また、猫は室内の上下を移動しますので、人間よりも温度差を感じる頻度が多くなります。
人にとっても猫にとっても、快適に暮らすためには、室内の温度差はなるべく少なくしておくことが重要です。
そこで必要になるのが、住宅の断熱性能です。
住宅の断熱性能を上げることによって、外気の影響を受けにくくすると共に、住宅内の温度差を低減させることができます。
住宅の断熱性能については、別の記事でまとめていますので、そちらをご覧ください。
猫との生活は家が傷つくし、汚れる
猫を既に飼っている方はよくお分かりかと思いますが、猫との生活は家が傷つきますし、汚れます。
猫は鋭い爪を持っています。
気を付けて爪を切ってはいても、いつの間にか爪は伸びています。
そして爪が伸びた手足で、家の中を全力疾走しますので、床に爪が食い込みます。
また、猫は爪とぎをします。
爪とぎをする場所は猫によって違っていて、あらかじめ準備した爪とぎでやってくれる場合もあれば、家の壁や柱でやってしまう猫もいます。
爪とぎについては躾ができると言われてはいますが、かなり根気が必要ですし、終始監視することはできませんので、なかなかうまくいきません。
我が家の猫は、基本的に用意した爪とぎでやってくれるのですが、メチャは私たちの気を引くためにわざと木の部分で爪とぎをします。
次に、猫はよく吐きます。
毛繕いをした時に一緒に飲んでしまった毛を吐き出すこともありますし、ご飯を食べすぎて吐いてしまうこともあります。
わが家のシロは、最近毛玉を吐く場所を決めているようですが、基本的には場所は関係なく至る所で吐きます。
また、水を飲めば首を振って口の周りに付いた水を振り払いますし、気づけば窓ガラスによく分からない分泌物が付いていたりします。
内装材(主に床材と壁材)の選び方
「猫との生活は家が傷つくし汚れる」ということを理解した上で、家づくりにどう反映させるかですが、主に床材と壁材をどう選ぶかということにつながります。
床材と壁材の選び方として、2通りの考え方があります。
- 傷つくことや汚れることを諦める
- 傷付きにくい、また、汚れてもきれいにできるような仕様にする
傷つくことや汚れることを諦める
一つ目の考え方は、「傷つくことや汚れることはしょうがないものとして諦める」という考え方です。
諦めて自分が好きな仕様のものを選ぶ。
その仕様が傷つきにくいものや、汚れてもすぐにきれいにできるものであればそれでいいし、そうでなくても気にしない。
ちなみに、我が家はそもそも猫を飼うことを想定せずに設計しましたので、全室無垢材のフローリングに、1階の壁は珪藻土(自分で塗りました)、2階は和紙の壁紙になっています。
で、どういう状態になっているかというと…
こんな感じです。
最初はこの惨状を受け入れがたいものがありましたが、今はもう諦めの境地です。
傷付きにくい、また、汚れてもきれいにできるような仕様にする
私のように諦められればいいのですが、これから何十年とローンを支払うことを考えると、なかなか割り切れるものではありませんよね。
そこでもうひとつの考え方は、傷付きにくく、また、汚れてもきれいにできるような仕様のものを選定することです。
床の仕様
床材で言えば、コーティングされている合板フローリング材を選ぶとか、カーペットにするということも考えられます。
ただ、合板フローリング材は猫にとっては滑りやすく歩きにくいですから、猫に適したフローリング材とは言えません。
また、カーペットにする場合はタイルカーペットにすることをお勧めします。
前述のとおり、猫はよく嘔吐しますし、その他の理由で汚れることもありますので、一枚物のカーペットだと洗うことができません。
タイルカーペットであれば汚れた部分だけを取って洗うことができます。
なお、わが家はカラマツの無垢フローリングを使用していますが、同じ無垢材でも堅い樹種のものを選定すれば多少は傷付きにくいかもしれません。
壁の仕様
壁の仕様で特に注意が必要なのは、床から1mくらいの範囲です。
猫が爪とぎをしようとする範囲、かつ、猫が汚す可能性の高い範囲ですね。
この範囲の傷を防止する場合は、腰壁を設けるのがおススメです。
我が家のように珪藻土でも爪とぎは防止できるのですが、汚れをふき取ることができません。
腰壁の素材は、塩化ビニルなどの、汚れてもふき取れる素材を選定してください。
腰壁の中には、壁紙の上に貼っておいて、汚れたり傷付いたら交換できるものがありますので、そういったものを選ぶ方法もありますね。
まとめ
愛猫との新しい家での生活を想像すると、ワクワクしてしまいますね。
後から簡単に変えられないものとして、住宅の断熱性能と内装仕上げについてまとめました。
愛猫とお互いに快適に暮らせる家づくりの参考になれば幸いです。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】