twitterを見ていたら「トレーラーハウスは確認申請が必要ない」みたいな記事が流れてきました。
トレーラーハウスとは、自動車でけん引できる車輪が付いた台の上に、居室として使用可能なコンテナが乗っているようなものです。
主な使用用途としては、一時的な店舗、事務所、住居などに使用されてきましたが、最近では、仮設住宅など、災害時に緊急に必要になる施設への使用も見られます。
確かに、トレーラーハウスは、「随時かつ任意に移動できる」場合は建築物ではありませんので、建築基準法の適用はありません。
建築基準法の適用がありませんので、当然に確認申請も必要ありません。
しかし、「随時かつ任意に移動できる」状態として取り扱われるためには、条件をクリアする必要があります。
逆に言うと、条件をクリアしていないトレーラーハウスは、建築物として扱われ、建築基準法が適用されることになります。
トレーラーハウスを「随時かつ任意に移動できる」状態として取り扱う条件について確認していきましょう。
「随時かつ任意に移動できる」状態とは?
トレーラーハウスの建築基準法上の取り扱いについては、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(日本建築行政会議編集)に記載があります。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」は、全国の自治体(特定行政庁)が取り扱いの参考としているものですから、概ね全国どこでも同じような取り扱いになっています(自治体によっては微妙に異なる場合もあります)。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」では、トレーラーハウスの他、バス、キャンピングカー等の車両を用いた工作物を「トレーラーハウス等」として、取り扱いを記載しています。
ここから読み取れる「随時かつ任意に移動できる」状態とは、次のような状態です。
- トレーラーハウス自体が走行可能な状態であること
- トレーラーハウスの走行に支障がない状態であること
それでは、順番に見ていきましょう。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」におけるトレーラーハウスの取り扱いの本文は、非営利型一般社団法人日本トレーラーハウス協会のHPで紹介されていますので、本文を確認したい方はそちらをご確認ください。
トレーラーハウス自体が走行可能な状態であること
まずは、トレーラーハウス自体が、走行可能な状態であることが必要です。
走行可能な状態とは、物理的な面と法律的な面の両面でその状態にある必要があります。
まず、物理的な面とは、車輪が、「走行するために十分な状態」であることが必要です。
車輪が取り外されていたり、パンクしていたりする場合は、走行可能な状態とは言えません。
次に、法律的な面とは、適法に公道を移動できる状態であることが必要です。
つまり、法的に車両として公道を移動できる状態にしておく必要があります。
法的に公道を移動できる状態について、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」には具体的に記載がありませんが、非営利型一般社団法人日本トレーラーハウス協会では、次のいずれかの状態が紹介されています。
- 車検を受けナンバープレートが交付されている(当然に取り付けられている)こと。
- 基準緩和認定、特殊車両通行許可及び臨時通行許可(仮ナンバー)を受けられる状態であること。
①と②の違いは、トレーラーハウスの構造が自動車の保安基準内か否かです。
大きさが一定以上のものについては、自動車の保安基準から外れるので車検を受けることができません。
通常、車検を受けることができなければ公道を通行することはできませんが、②の方法によって公道を通行することが可能となります。
トレーラーハウスの走行に支障がない状態であること
トレーラーハウス自体が走行可能な状態にあっても、次のような状態にある場合は「随時かつ任意に移動できる」状態とは言えません。
- トレーラーハウスの移動に支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等がある
- 給排水、ガス、デッキ、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等が、工具要しなければ取り外すことができない
- トレーラーハウスを、設置場所から公道まで移動できない
簡単に言うと、トレーラーハウスを動かそうとした時に、すぐに動かせない状態にある場合はダメですよということです。
トレーラーハウスの周囲に、手動で簡単に移動できない障害物があったり、例えば上下水道の配管を接続してしまったら移動できませんよね。
また、トレーラーハウスを設置した後に、敷地造成をして階段でしか行けないようにしてしまった場合、トレーラーハウスを公道まで移動することができなくなります。
このような場合は、「随時かつ任意に移動できる」状態とは言えません。
まとめ
トレーラーハウスが建築基準法上の建築物に該当しない条件は、「随時かつ任意に移動できる」状態であることです。
そもそも、トレーラーハウスは移動を前提として作られているのですから、当然ですよね。
建物を建てるよりも安く、気軽に設置できるからと言って、安易にトレーラーハウスを設置しないように注意してください。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】