
設計とは?工事監理とは?
まずは、「設計」・「工事監理」って何?というところから解説します。
「設計」と「工事監理」の定義は、建築士法にあります。
「設計」とはその者の責任において設計図書を作成することをいう。(第2条第6項後段)
「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。(第2条第8項)
設計は、建築工事を行う前に行うもので、必要な図面など(設計図書といいます)を作成する行為です。
一方で、工事監理は、工事中に行うもので、設計図書のとおりに工事が施工されているか確認する行為です。
建築士が行わなければならない設計・工事監理
次に、建築士が行わなければならない建築物の設計・工事監理について確認していきましょう。
まずは、建築基準法には、次のように規定されています。
第五条の六 建築士法第三条第一項(同条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)、第三条の二第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)若しくは第三条の三第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する建築物又は同法第三条の二第三項(同法第三条の三第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定に基づく条例に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。
[略]
4 建築主は、第一項に規定する工事をする場合においては、それぞれ建築士法第三条第一項、第三条の二第一項若しくは第三条の三第一項に規定する建築士又は同法第三条の二第三項の規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
5 前項の規定に違反した工事は、することができない。
ここでは、「建築士法で定める建築物の工事に係る設計・工事管理は、建築士が行わなければなりませんよ」ということが書いてあります。
では、建築士法の規定を確認してみましょう。
(一級建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条 左の各号に掲げる建築物(建築基準法第八十五条第一項又は第二項に規定する応急仮設建築物を除く。以下この章中同様とする。)を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
一 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が五百平方メートルをこえるもの
二 木造の建築物又は建築物の部分で、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの
三 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロツク造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が三百平方メートル、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルをこえるもの
四 延べ面積が千平方メートルをこえ、且つ、階数が二以上の建築物
2 建築物を増築し、改築し、又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては、当該増築、改築、修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなして前項の規定を適用する。
(一級建築士又は二級建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条の二 前条第一項各号に掲げる建築物以外の建築物で、次の各号に掲げるものを新築する場合においては、一級建築士又は二級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
一 前条第一項第三号に掲げる構造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が三十平方メートルを超えるもの
二 延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあつては、三百平方メートル)を超え、又は階数が三以上の建築物
2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
3 都道府県は、土地の状況により必要と認める場合においては、第一項の規定にかかわらず、条例で、区域又は建築物の用途を限り、同項各号に規定する延べ面積(木造の建築物に係るものを除く。)を別に定めることができる。
(一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条の三 前条第一項第二号に掲げる建築物以外の木造の建築物で、延べ面積が百平方メートルを超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
2 第三条第二項及び前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第三項中「同項各号に規定する延べ面積(木造の建築物に係るものを除く。)」とあるのは、「次条第一項に規定する延べ面積」と読み替えるものとする。
これらに書いてあることは、『建築士には一級建築士、二級建築士、木造建築士という3種類あって、それぞれにできる範囲が決まっていますよ』ということです。
法律なので回りくどい書き方になっていますが、第3条の「 一級建築士でなければできない設計又は工事監理 」ということは、逆に言うと、「ここに書いてあるものは、二級建築士と木造建築士ではできませんよ」ということです。つまり、一級建築士は全ての建築物の設計を行うことができます。
次に、第3条の2は、「 一級建築士又は二級建築士でなければできない設計又は工事監理 」ということなので、「木造建築士ではできませんよ」ということです。
最後に、第3条の3は、「 一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければできない設計又は工事監理 」ということなので、「建築士じゃなければできませんよ」ということです。
ということは、建築士じゃなくてもやっていい設計・工事監理があるということです。例えば、木造2階建て住宅で延べ面積が100㎡以下のものについては、建築士じゃなくても設計・工事監理を行うことができます。

建築士法の定めの他に、第3条の2第3項にあるように、都道府県条例でさらに規制している場合がありますので注意してください。
もう一度、建築基準法第5条の6を見てみましょう。
第五条の六 建築士法第三条第一項(同条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)、第三条の二第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)若しくは第三条の三第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する建築物又は同法第三条の二第三項(同法第三条の三第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定に基づく条例に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。
[略]
4 建築主は、第一項に規定する工事をする場合においては、それぞれ建築士法第三条第一項、第三条の二第一項若しくは第三条の三第一項に規定する建築士又は同法第三条の二第三項の規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
5 前項の規定に違反した工事は、することができない。
要するに、「建築士法で定められた建築士が設計・工事監理する必要がある建築物の工事は、建築士が設計・工事監理しないと施工してはいけませんよ」「その範囲は建築士の区分によって違いますよ」ということです。
建築士法では、あくまで設計・工事監理についての資格要件を定めているに過ぎないので、建築基準法において工事について規定しているということです。
「…ということは、建築士が関与しなければならない建築物以外は、設計と工事監理はしなくていいということ?」という疑問が湧きます。
法律上規定はありません(と思います)が、建築物を建築するには頭の中であっても必ず設計しなければならないですし、その設計に合うように建築する訳ですから、設計と工事監理は必ずやるものだという前提にあると私は解釈しています。
ここでは触れていませんが、大規模な建築物については、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士が関与しなければならないのですが、戸建て住宅の規模ではあまり関係しないので、ここでは解説を省きます。

とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】