建築基準法は、建築物に関する法律です。
では、建築物とは何でしょうか。
建築基準法第2条第1項第1号に定義があります。
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
ここのポイントは次の6つです。
- 土地に定着する工作物
- 屋根及び柱若しくは壁を有するもの
- 上記に付属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所等
- 建築設備を含む
それでは、順番に見ていきましょう。
土地に定着する工作物
まず、建築物は「土地に定着する工作物」であるということが書いてあります。
では、「土地に定着する」とはどういうことか。
簡単に言えば、「随時かつ任意に移動できない状態」のことを言います。
なので、必ずしも強固に地面に固定されていなくてもいいのです。
例えば、船を岸壁に固定して(停泊ではなく船としては移動できない状態として)ホテルとして使用する場合は、水に浮いている状態ですが移動できないので建築物となります。
よく、住宅用物置とかで「基礎がないから建築物ではない」と言い張る人がいますが、上記の例のとおり基礎の有無は建築物の必須条件ではありませんのでその理屈は通りません。
なので、よくホームセンターなどで売っている物置は原則として建築物となります。
ただし、平成27年に国土交通省から「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」が発出されています。
この取り扱いについては自治体(特定行政庁)で多少の判断に差異がありますが、概ね奥行が1m以内のもの、高さが1.4m以下のものは建築物とはならないようです。
この取り扱いについては、設置しようとする自治体(特定行政庁)に確認が必要です。
屋根及び柱若しくは壁を有するもの
この項目は、そのままですね。
まず、「屋根」は必須で、それを支える「柱」又は「壁」があるものということです。
建築物に付属する門若しくは塀
あくまで、建築物に「付属する」ということですから、更地に門や塀があったとしても、それは建築物ではないということになります。
観覧のための工作物
例えば、陸上競技場なんかは客席全体に屋根がかかっていない場合もありますね。
この場合でも屋根がかかっていない部分を含めて建築物になりますよということです。
地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所等
ここで言っているのは、空間を構成する構造自体は建築物ではないけれど、その内部空間は建築物の規定が適用されますよということです。
例えば、水門の上部にある管理室なんかは、構造自体は土木工作物ですが、その上にある管理室は建築物としての規制を受けます。
東京タワーやスカイツリーなんかもこの類ではないでしょうか。
そのもの自体は工作物ですが、展望台部分については建築物の規制を受けていると思います。
建築設備を含む
最後に、上記のものに建築設備がある場合はそれも建築物の一部ですよということです。
建築設備が何かというのは、法第2条第1項第3号に規定されています。
建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
鉄道施設の一部が建築物から除かれているのは、当時は国土交通省ではなく、建設省と運輸省で分かれていたので、利権の関係があったとか、なかったとか…
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】