建築物は建てて終わりではありません。
建築後は好きにしていいということではなく、建築後も適法に維持管理しなければならないことが定められています。
建築基準法には、建築する際の規定だけではなく、建築物の維持管理に係る規定があります。
それが法第8条です。
(維持保全)
第八条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
2 次の各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。ただし、国、都道府県又は建築主事を置く市町村が所有し、又は管理する建築物については、この限りでない。
一 特殊建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの
二 前号の特殊建築物以外の特殊建築物その他政令で定める建築物で、特定行政庁が指定するもの
3 国土交通大臣は、前項各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者による同項の準則又は計画の適確な作成に資するため、必要な指針を定めることができる。
第1項では、「建築物を常時適法な状態に維持」してくださいねということが書かれています。
建築基準法では、建築当初は確認申請等によって適法性が担保されますが、その後は増築等をして新たな確認申請が必要とならない限りチェックの機会がありません。
このことから、この規定によって、建築後も適法な状態に保つことを求めているものです。
第2項は、一定の建築物については、「必要に応じて」維持保全計画書を作成することが求められています。
「必要に応じて」ということは義務ではないということですが、何らかの措置を講じることが求められています。
第1号は国が政令で指定し、第2号は特定行政庁が条例で指定することとなっていますが、国が政令で「少なくともこれは指定した方がいいよ」と助言している形になっています。
どういう建築物が該当するかは、施行令第13条の3に規定されています。
第十三条の三 法第八条第二項第一号の政令で定める特殊建築物は、次に掲げるものとする。
一 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの(当該床面積の合計が二百平方メートル以下のものにあつては、階数が三以上のものに限る。)
二 法別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が三千平方メートルを超えるもの
2 法第八条第二項第二号の政令で定める建築物は、事務所その他これに類する用途に供する建築物(特殊建築物を除く。)のうち階数が五以上で延べ面積が千平方メートルを超えるものとする。
不特定多数の利用が見込まれるものや、火災負荷の大きいものが指定されていますね。
法第8条第3項に基づく国の指針はこちらです。
また、維持保全計画書は、公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)のホームページから参考書式を入手することができます。
建築物は、個人の所有物であるとともに、社会を構成する一部でもあります。
適切に管理し、自分たちのまちの価値の維持・向上に努めることが重要です。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】