前回の記事では、断熱のしくみについてご紹介しました。
本記事では、断熱に必要な断熱材の種類やその特徴についてご紹介します。
断熱材には色々な種類があり、同じ厚さでも断熱性能が異なります。
また、断熱材の中には、断熱性能以外の特徴を持っているものもあります。
断熱材は大きく分けて次の2つに分類されます。
- 繊維系断熱材
- プラスチック発泡系断熱材
それでは、順番に見ていきましょう。
繊維系断熱材
繊維系断熱材は、細い繊維が絡まって構成された断熱材です。
絡まった繊維の中に空気を溜め込むことによって空気層を構成し、断熱します。
断熱材の王様「グラスウール」
グラスウールは、住宅の断熱材として最も使用されているものの一つです。
ホームセンターでも取り扱われているくらい一般的な断熱材です。
グラスウールは細いガラス繊維でできた綿(わた)のようなもので構成されています。
袋入りのものとそうでないものがありますが、その袋は防湿シートでありグラスウールに水を寄せ付けないために袋に入れられています。
袋入りのものは防湿シートの施工が必要なく施工性が高いのですが、袋入りの場合は形が決まってしまっており必ずしもうまく嵌る訳ではないことや、袋が破れやすいことから、袋入りのものを使用したとしても改めて防湿シートを施工することが望ましいです。
なお、同じグラスウールでも種類により性能に差がありますので注意が必要です。
種類 | 熱伝導率λ[W/m・K] | |
通常品 | 10-50 | 0.050 |
16-45 | 0.045 | |
20-42 | 0.042 | |
24-38 | 0.038 | |
32-36 | 0.036 | |
高性能品 | HG14-38 | 0.038 |
HG16-38 | 0.038 | |
HG24-36 | 0.036 | |
HG32-35 | 0.035 | |
HG40-34 | 0.034 | |
HF48-33 | 0.033 |
種類の欄に記載されているハイフンの前の数字が密度(kg/㎡)を表していて、後の数字は熱伝導率を表しています。
熱いところが得意「ロックウール」
ロックウールは、鉱物原料等を綿状に繊維化したものです。
グラスウールと同じように使用できますが、グラスウールより熱に強いという特徴があり、住宅ではよく薪ストーブの煙突の周りに施工されます。
ロックウールは、住宅全体に使用されるというよりは、部分的に使用されることが多いです。
ロックウールも、種類によって性能が異なります。
種類 | 熱伝導率λ[W/m・K] |
MA | 0.038 |
MC、HA | 0.036 |
HB | 0.035 |
HC | 0.034 |
環境にやさしい「セルローズファイバー」
セルローズファイバーは、回収された新聞紙などの古紙を原料にした断熱材です。
古紙を原料としているので製造時のエネルギー負荷が低く、ホウ素系化合物を添加しているので防腐性が向上していることに加え、原材料が紙であるにも関わらず難燃性もあります。
また、吸放湿性にも優れていることから、室内の湿度環境を整える効果も期待できます。
セルローズファイバーは、密度による熱伝導率の影響がほとんどありません。
通常、天井は25kg/m3、屋根・床・壁は40~60kg/m3の密度で施工されますが、熱伝導率は0.040W/m・Kとして設計することができます。
木の断熱材「ウッドファイバー」
ウッドファイバーは、木材の繊維を板状に成形した断熱材です。
まさに木でできた断熱材です。
吸放湿性はセルローズファイバーよりも高く、蓄熱性もあるため、より室内環境を整える効果が高いと言えます。
また、ホウ酸が添加されているため防腐性も高いです。
原材料が木であることから燃えやすいと思われがちですが、木は表面が炭化することで内部まで燃え進みにくくする特性がありますので、一定の防火性もあります。
熱伝導率は、0.038W/m・Kです。
THE天然断熱材「羊毛」
羊毛は、セーターなど衣類にも使用されており、「羊毛=暖かい」というイメージを持っている方も多いと思います。
羊毛単独若しくは羊毛にポリエステルなどを加え、フェルト状に成形したものが羊毛断熱材です。
住宅にセーターを着せているのと同じですね。
羊毛は、吸放湿性に優れていることから、室内の湿度環境を整える効果もあります。
羊毛断熱材は、製品によりその性能が異なりますので、代表的な製品のリンクを貼ることで断熱性能の紹介に代えさせていただきます。
補足
通常、住宅の外壁の内側には、室内の湿気を壁体内に流入させないため防湿シートを施工しますが、上記の羊毛断熱材は、防湿シートを施工しなくても省エネ基準(断熱等性能等級4)に適合させることができます(1~3地域は除く)。
プラスチック発泡系断熱材
プラスチック発泡系断熱材は、プラスチック系の材料を発泡させて作られる断熱材です。
板状のものと吹き付けて使用するものの2種類あります。
原材料の違いで色々な種類がありますが、共通して耐水性があり、板状のものは基礎や外張断熱に使用され、吹き付けて使用するものは基礎や充填断熱に使用されます。
主な種類と熱伝導率は次のとおりです。
種類 | 熱伝導率λ[W/m・K] | |||
ビーズ法ポリスチレンフォーム断熱材 | 1号 | 0.034 | ||
2号 | 0.036 | |||
3号 | 0.038 | |||
4号 | 0.041 | |||
押出法ポリスチレンフォーム断熱材 | 1種 | b | A | 0.040 |
2種 | b | A | 0.034 | |
3種 | b | A | 0.028 | |
硬質ウレタンフォーム断熱材 | 1種 | 1号 | 0.029 | |
2種 | 1号 | AⅠ、AⅡ | 0.023 | |
2号 | AⅠ、AⅡ | 0.024 | ||
3号 | 0.027 | |||
4号 | 0.028 | |||
ポリエチレンフォーム断熱材 | 1種 | 1号、2号 | 0.042 | |
2種 | 0.038 | |||
3種 | 0.034 | |||
フェノールフォーム断熱材 | 1種 | 2号 | CⅠ、CⅡ | 0.020 |
3号 | CⅠ、CⅡ | 0.020 | ||
吹き付け硬質ウレタンフォーム断熱材 | A種 | 1H、2H | 0.026 | |
1、2 | 0.034 | |||
3 | 0.040 |
結局、断熱材はどれがいいのか
断熱材は断熱性能を確保できれば正直どれでもよくて、好みの問題です。
また、断熱材の種類によって価格が違いますので、予算との兼ね合いもあります。
グラスウールやプラスチック発泡系断熱材は、断熱材の中では比較的安価です。
断熱性能だけを考えるのであれば、グラスウールやプラスチック系断熱材で十分です。
ちなみに我が家は、吸放湿性が欲しかったので、(セルローズファイバーと迷いましたが)羊毛断熱材とウッドファイバーを使用しました。
冬はどうしても湿度が不足しますが、夏はカラッとして快適ですよ。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】