これまで、「住宅は性能を重視すべし」なんてことを偉そうに書いていて、「自分の家はどうやねん」ということで、自分が住んでいる家について御紹介したいと思います。
ハゲカケらんなー邸のスペック
・省エネ地域区分:3地域
・明治時代の町屋(2軒長屋)をリフォーム
・UA値:0.41(HEAT20G1水準(0.38)に少し足りない)
※自前で算定したので、正確性に欠ける可能性あり。
・BEI値:0.83
・主な断熱仕様:
・ウールブレスと内装仕上げに使用した珪藻土及び
・暖房は、リビングに設置したエアコン+ダイニングに設置したパネルヒーターに補助暖房として薪ストーブ
・第3種換気
・完成年月:平成27年10月
3地域の中でも結構寒い地域
まず、居住している場所なのですが、建築物省エネ法の地域区分で言うと3地域になります。
冬は雪はあまり降りませんが、寒さが厳しく、最低気温がマイナス15℃以下になることもあります。冬は真冬日(一日中0℃以下)になる日も多いです。標高が高めの盆地なので、3地域の中でも寒い方かと思います。
夏は、南の方と比べれば涼しいのでしょうが、最近は30℃以上の日が続くこともあります。ただ、熱帯夜になることはあまりないので、夜エアコンつけないと暑くて寝られないという日数は、1か月ないくらいでしょうか。
明治時代の町家に出会い購入・リフォーム
今住んでいる場所には何の所縁もなく、仕事の関係で住むことになっただけです。来た当初はここに家を持つなんてことは微塵も考えていませんでした。
以前から、「新築よりは古い家をリフォームして住みたい」と思っていましたが、妻の持ってきた縁で明治時代の町家を取得することにました。
この町家は2軒長屋のようになっていて、1階の真ん中に奥の庭に通じる通路があり、その両側に1軒ずつあるという構成になっています。なので、2軒分を購入したという形です。
このうち1軒分は店舗として使われていたので、残りの1軒分をリフォームして住んでいます。
リフォーム手法は、ほぼスケルトンリフォーム
明治時代の建物なので耐震性能はあるはずもなく、もちろん断熱性能も皆無ですから、リフォーム手法としては、構造体だけ残してあとは壊すという「スケルトンリフォーム」の手法を取っています。
ただ、建物の半分のリフォームなので、屋根が繋がっていることから屋根は塗り替えのみとし、正面の外壁についても雰囲気を残したかったので補修のみとしています。
構造としては、既存の構造体の内側に新たに構造体を作るようなイメージです。
ただ、半分しかリフォームできないことから、耐震性能についてはバランスを考慮してほどほどにしています。
ほぼ建て替えに等しいので、費用としては新築並みにかかりました。
こだわったのは「高断熱・高透湿」
居住地は寒冷地ですので、冬暖かい住宅にしたいという思いはありました。
ただ、この家のリフォームの設計をしていた時は、恥ずかしながらHEAT20を知りませんでしたので、省エネ基準は上回らないとダメだなくらいに思っていました。
一方で、「高断熱・高気密」ということは言われていましたが、高断熱はその通りとして、高気密(特に屋内側の防湿層)というところに引っかかりがありました。
理論的には分かります。高気密にした方が効率がいいということは分かります。
ただ、感覚的にとしか言えないのですが、「なんか窮屈そう…」っていう感じがしていました。
これは、学生の時に「バウビオロギー」を少し齧っていたことが影響しています。
バウビオロギーの「建築は第三の皮膚である」という考え方と「気密」が感覚的に結び付きませんでした。
一方で、壁体内結露は防止しなければなりません。
そこで行き着いたのが、「高断熱・高調湿」です。
断熱材はセルローズファイバーと迷いましたが、より自然素材に近い羊毛断熱材(ウールブレス)を使用し、屋内側の防湿シートは省略しています。防湿シートを施工してしまうと、断熱材の調湿性能を生かせないと考えたからです。
壁は、1階は内装下地材の石膏ボードの上に珪藻土仕上げ、2階は一部土壁を残すこととしたことから、断熱補強を兼ねて木でできた断熱材の「ウッドファイバー」を仕上げとして使用しています。
湿気は壁体内に入っていきますが、調湿性能の高い内装仕上げや羊毛断熱材が適度に湿気を吸収し、湿度の低い室内に再放出する、又は屋外に湿気を逃がすというイメージです。
防湿シートを施工しないという結論に至ったのは、前述のとおり既存構造体の内側に補強の構造体を設けた関係で壁厚がかなり取れることから、羊毛断熱材を160㎜から200㎜入れることができたということも大きいです。
定常計算をすると断熱材と構造用面材との間で結露が生じるという結果になりますが、定常計算では建材の調湿性は考慮されていません。
設計当時に非定常計算を行ってはいませんが、壁に点検口を設けて、壁体内の状態確認ができるようにしています。
今年(2022年)の冬になったら、点検口の中にスイッチボットの温湿度計を仕込んで、計測したいと考えています。
冬季間(2021.12~2022.3)の室温と電気代について別記事でまとめていますので、興味がある方はご覧ください。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】