DIYで小屋(居室を有するもの)を建築する場合の建築基準法上の規定について、前回は、構造上の規定についてまとめましたが、今回は意匠上の規定について解説していきます。
なお、今回の解説は、確認申請が必要ない地域・規模(防火地域及び準防火地域以外で10㎡以内の敷地内増築)に建築することを前提としています。
意匠上の規定
用途について
DIYハウスを住宅の敷地内に増築する場合は、一戸建ての住宅の離れという扱いになると思いますので、用途としては住宅となるものと考えます。
建蔽率・容積率・外壁後退
都市計画区域内である場合は、敷地に建蔽率や容積率が設定されています。
- 建蔽率:敷地面積に対する建築物の屋根投影面積の割合
- 容積率:敷地面積に対する建築物の延べ床面積の割合
容積率をオーバーすることはあまりないと思うのですが、建蔽率は可能性があります。
住居系の用途地域だと、建蔽率の規定が厳しいですので確認が必要です。
また、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域及び田園住居地域内の場合は、敷地境界線からの外壁後退距離が定められている場合がありますのでこちらも注意が必要です。
屋根・外壁の構造(防火上)
都市計画区域内で用途地域が設定されている場合は、防火地域及び準防火地域となっていない場合でも、建築基準法第22条に規定される屋根不燃区域に指定されていると思います。
用途地域が設定されていなくても、屋根不燃区域に指定されている場合もあります。
この場合は、屋根の構造が制限されます。
特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物又は延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分については、この限りでない。
ここで規定される「国土交通大臣が定めた構造方法」とは、「屋根を不燃材料で造るか葺く」ということになります。
また、法第22条で指定する区域内の場合は、法第23条において外壁の構造にも制限を受けます。
前条第1項の市街地の区域内にある建築物(その主要構造部の第21条第1項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第25条及び第61条において「木造建築物等」という。)に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
よって、屋根と外壁の構造について注意する必要があります。
採光・換気・排煙
居室を有するものということを前提としていますので、基本的な3要素である採光・換気・排煙について考えなければいけません。
採光・換気は建築基準法第28条になりますね。
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
3 別表第1(い)欄(1)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
DIYハウスの用途は住宅になると思いますので、採光に有効な開口部の面積は床面積の1/7以上必要になります。
また、換気に有効な開口部の面積は1/20以上必要です。1/20以上ない場合は規定の性能を有する換気設備を設ける必要があります。
通常は、排煙上有効な開口部(床面積の1/50以上)がない場合は排煙設備が必要になりますが、住宅で階数が2以下かつ床面積が200㎡以下で、換気上有効な開口部が1/20以上ある場合は排煙設備が免除されます。
よって、今回のDIYハウスは排煙は気にしなくていいですね。
シックハウス対策
居室の場合は、シックハウス対策を検討する必要がありますね。
条文は建築基準法第28条の2です。
建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
[略]
三 居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。
なお、この規定は石綿(いわゆるアスベスト)に関する規定もありますが、アスベストが使用された製品は基本的に市場に出回っていませんので気にしなくても大丈夫です。
材料については、気にするとすれば塗料でしょうか。
F☆☆☆☆のものを使用してくださいね。
正確にはF☆☆☆☆以外でもいいのですが使用量に上限がありますので、F☆☆☆☆にしておけば間違いないです。
また、24時間換気設備が必要です。換気回数は0.5回/h以上です。
換気設備を設ける必要があるとなると、電気を引かないといけませんね。
まとめ
意匠上の規定は、土地に設定されている規制と、建築物に必要な性能があります。
最近だと、容量の大きいポータブル電源が出てきていますので、内部の電気や使用する家電製品はポータブル電源で賄おうと考える方もいると思いますが、24時間換気は必須であり、これに対応する電源の確保も必要ですので注意が必要です。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】