令和7年4月1日以前に住宅購入・建設を考えている方が注意すべきこと

令和7年4月1日以前に住宅購入・建設を考えている方が注意すべきこと

近年、物価上昇により、住宅建設費用が高騰しています。また、日銀の利上げに影響され、住宅ローンの金利上昇の報道も見られ、今後の情勢によってはさらなる住宅ローンの金利上昇の恐れもあります。住宅購入・建設に係る費用は今後も上昇が見込まれる状況です。

ハゲカケ
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給料も上がってくれればいいのですけどね…

このような中、住宅購入・建設を考えている方の中には、焦りを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、ちょっと待ってください。

実は、令和7年4月1日以降に着工する住宅と、それ以前に着工する住宅では、住宅の基準が変わります。簡単に言うと、令和7年4月1日以降に着工する住宅の方が、法律で定められた基本性能が高くなるのです。

なぜそうなるかと言うと、住宅の基本的な性能を定めている建築基準法(関連法を含む。以下同じ。)が、令和7年4月1日に改正されるからです。正確に言うと、法律自体はすでに改正されているのですが、その施行が令和7年4月1日からとなっています。

ここでは、令和7年4月1日前後でどのような違いがあるのか、法律改正前に住宅を購入・建設する場合はどのような点に注意すべきか解説します。

建築基準法の改正内容(令和7年4月1日施行)

令和7年4月1日に施行される建築基準法の改正内容は大きく次の3点です。

  • 省エネ基準の適合義務化
  • 構造規定の強化
  • 確認申請の審査対象の拡大

順番に確認していきましょう。

省エネ基準の適合義務化

これまで、建築物の省エネ基準は定められていたものの、住宅はその基準への適合が義務ではありませんでした。しかし、令和7年4月1日からは、住宅を含めた全ての建築物について、原則として省エネ基準への適合が義務化されます。

これにより、令和7年4月1日以降に着工される住宅については、最低限の省エネ性能が確保されることになります。

構造規定の強化

省エネ基準を満たすには、壁の中や天井裏、床下などに断熱材を入れることが必要です。また、太陽光パネルを屋根に設置する住宅も増えてきています。これは、住宅が重くなることを意味しています。住宅が重くなると、地震で住宅が揺れやすくなります。

これまで建築基準法で定められていた構造基準では、省エネ基準への適合によって重くなる住宅には心許ないということで、より高い強度となるよう構造規定の強化が図られています。

このことにより、令和7年4月1日以降に着工される住宅については、簡単に言えばこれまでよりも地震に強い住宅となります。

確認申請の審査対象の拡大

住宅などの建築物を建築する場合は、確認申請を行い確認済証の交付を受ける必要があります。

これまで、建築士が設計・工事監理した木造住宅などの小規模な建築物については、専門家であり、かつ資格を有する者が関与するということで、確認申請の審査項目について多くの規定が対象外となる特例が設けられていました。いわゆる「4号特例」というものです。

しかし、令和7年4月1日以降に着工する建築物について、この特例が適用される範囲が縮小されます。簡単に言うと、特例の範囲は、平屋で延べ面積が200㎡以下の建築物だけになります。これまでは、木造であれば2階以下で500㎡以下までが特例の範囲でしたので、かなり縮小されることになりますね。

令和7年4月1日以前にどうしても住宅が欲しい場合の注意点

前述のとおり、令和7年4月1日以降に着工される住宅は、省エネ性能や耐震性が強化され、チェック機能も強化されることから、消費者にとってより安心して住宅を購入・建設することができます。これから土地探しをされる方などは、令和7年4月1日以降に着工する方が良いでしょう。

一方で、「一日でも早く新居で暮らしたい!」という思いも理解できます。そこで、令和7年4月1日以前にどうしても住宅が欲しい方向けに、性能の低い住宅を掴まないための注意点をお知らせします。それは、既存の制度を活用して、令和7年4月1日以降に着工される住宅と同等以上の性能とチェックを受けておくことです。

それでは、どのような既存の制度があるのか見ていきましょう。

長期優良住宅の認定制度を活用する

長期優良住宅とは、その名のとおり「長期間居住を可能とする性能の高い住宅」です。長期とは概ね3世代(100年)程度を指します。詳しくは、別の記事で解説していますのでそちらもご覧ください。

実は、長期優良住宅は、令和7年4月1日以降の住宅の性能以上の性能を有していますので、長期優良住宅にすれば自動的に改正後の建築基準法に適合することになります。逆に言えば、長期優良住宅の認定を受ける場合は、建築基準法の改正は関係ないということになります。

また、長期優良住宅の認定の審査では、原則として確認申請のような審査の省略はありませんので、その点でも安心ですね。

ただ、長期優良住宅だから十分な性能かと言うとそうと、そうとも言えません。より性能の高い住宅を求める場合は、次の記事をご覧ください。

住宅性能表示制度を活用する

住宅性能表示価制度は、文字通り「住宅の性能を評価し表示する制度」です。詳しくは別記事で解説していますので、そちらをご覧ください。

正直言うと、長期優良住宅制度を活用する方が、税制面でのメリットが大きいので、そちらをお勧めします。ただ、長期優良住宅は、建築基準法令で定める性能以上の性能を求めていますので、そこまで求めない場合は住宅性能表示制度を活用するのがいいでしょう。

住宅性能表示制度では、いろいろな性能を評価しますが、ここでは改正建築基準法に関係する耐震性能と省エネ性能について解説します。住宅性能表示制度では評価項目毎に等級が定められており、その等級によりその住宅の性能を示すことができるという仕組みです。

耐震性能

住宅性能表示制度における耐震性能の等級は、等級1から等級3まであります。等級1の地震に対する強さを1とすると、等級2は1.25、等級3は1.5の性能があります。

等級1は建築基準法で定める耐震性を有するレベルですが、令和7年4月1日より前に住宅性能表示制度の評価を受ける場合は改正前の建築基準法のレベルということになります。つまり、改正後の建築基準法の耐震性を得られないということです。

よって、住宅性能表示制度で耐震性能を評価する場合は、等級2以上を満たすことをお勧めします。

省エネ性能

住宅性能表示性能において、省エネ性能を評価する項目は2種類あり、断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級です。令和4年7月1日以降の住宅には断熱等性能等級4を満たすことが求めれます。この基準は令和7年4月1日の前後で変わりませんので、等級4を満たせば改正後の建築基準法の性能を満たすことになります。

まとめ

住宅の着工時期が令和7年4月1日前後では、住宅の性能やチェック機能に違いがあります。特に耐震性能と省エネ性能が重要です。

「一日でも早く新しい家で生活したい」という気持ちは分かりますが、何十年と住む家ですので、性能の低い住宅を掴まないよう注意しましょう。