長期優良住宅ってどんな住宅?基準は?【住宅の性能として目安となる基準】≪令和4年10月1日から基準が改正されています≫

長期優良住宅ってどんな住宅?基準は?【住宅の性能として目安となる基準】≪令和4年10月1日から基準が改正されています≫

長期優良住宅」をご存じでしょうか。

この制度は、諸外国に比べ日本の住宅の寿命が短いことから、長期に渡って存続可能な住宅をつくろうということで、平成20年制定された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づくものです。

日本の住宅は寿命が30年程度と言われており、法施行時の謳い文句としては「100年住宅」とか言っていた気がします。

長期優良住宅は、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」と国土交通省のホームページに掲載されています。

長期優良住宅は認定制度があり、一定の基準を満たすよう設計を行い、工事の着手前に自治体(特定行政庁)に申請することで認定を受けることができます。

一定の基準とは、次の5つになります。

  1. 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
  2. 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
  3. 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
  4. 維持保全計画が適切なものであること。
  5. 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。

具体的にどのような基準か見ていきましょう。

ハゲカケ
ハゲカケ

ここでは、木造戸建て新築住宅に関するものをご紹介します。

令和4年10月1日から基準が改正されました

令和4年10月1日から、長期優良住宅の認定基準が変わりました。

旧基準での認定申請は令和5年3月31日までになります。

令和5年4月1日以降に長期優良住宅の認定申請を行う場合は新基準に適合していなければなりませんので、注意してください。

R4.10.1からの改正の趣旨

2050年カーボンニュートラルに向けて、さらなる省エネルギー対策が必要になったことから、省エネルギー対策をZEH水準まで引き上げ。

これに伴い、断熱材や省エネ設備などにより建築物が重量化することから、耐震性能についても引き上げ。

住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置

長期優良住宅の基準として最も重要なのが、この項目です。

この項目は、長期優良住宅として住宅に求められる性能に関する基準になります。

基準を一覧にまとめると次のとおりです。

性能項目新築基準
劣化対策劣化対策等級3の基準に適合し、かつ構造の種類に応じた基準に適合
(木造・鉄骨造)
・床下空間の有効高さ確保及び床下・小屋裏の点検
口設置など
(鉄筋コンクリート造)
・水セメント比を減ずるか、かぶり厚さを増すこと
耐震性以下のいずれか(主な基準)
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)等級2以上の基準に適合
・品確法に定める免震建築物であること。
維持管理・更新の容易性以下の基準に適合
・維持管理対策等級(専用配管)の等級3
省エネルギー対策以下の基準に適合
・断熱等性能等級5の基準に適合
・一次エネルギー消費量等級6の基準に適合
(ZEH水準相当)

劣化対策

住宅の構造上重要な部分がすぐに劣化してしまったら、住宅を長期間使用することはできませんよね。

また、構造部材等の点検や問題が生じた場合のメンテナンスをしやすくしておく必要があります。

そういった理由から、劣化対策の基準が設定されています。

基準をおさらいすると、次のとおりです。

劣化対策等級3の基準に適合し、かつ構造の種類に応じた基準に適合

(木造・鉄骨造)
・床下空間の有効高さ確保及び床下・小屋裏の点検口設置など

(鉄筋コンクリート造)
・水セメント比を減ずるか、かぶり厚さを増すこと

後段のかつ以降については、木造、鉄骨造については、点検をしやすいような措置が求められていて、鉄筋コンクリート造については、コンクリートの耐久性を高める措置が求められていることが分かります。

それでは、前段の劣化対策等級3というのはどういう基準なのでしょうか。

この劣化対策等級というのは、住宅性能表示制度に基づくもので、評価方法基準という基準によるものです。

劣化対策等級は1から3まであって、3が最高等級です。

等級3は、通常想定される自然条件及び維持管理条件の下において、構造躯体について、「住宅が限界状態に至るまでの期間が3世代以上となるための必要な対策」が講じられていることとされています。

「限界状態」とは、「劣化が激しく性能を回復できない、若しくは性能を回復するためには経済的に大きな負担がかかる状態」のことで、「1世代」は「25年から30年」と定義されています。

よって、等級3の基準を満たしていれば、最低75年間は、住宅を建て替えなければならないような劣化は生じないということです。

耐震性

耐震性は、地震に対する住宅の強さです。

日本は地震大国です。

世界の地震の約2割が日本で発生していると言われており、耐震性は長期に住宅を使用する上で重要な要素です。

基準をおさらいすると、次のとおりです。

以下のいずれか(主な基準)

・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)等級2以上の基準に適合

・品確法に定める免震建築物であること。

大地震が発生しても損傷しない、若しくは軽微な損傷ですむような基準として設定されています。

順番に解説していきます。

耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)等級2

耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)とは、劣化対策等級と同じで住宅性能表示制度に基づくもので、評価方法基準によるものです。

耐震等級は1から3まであって、3が最高等級です。

耐震等級1は建築基準法を満たすレベルであり、等級2及び等級3は、等級1が耐えられる地震力を1.0とした場合、次の表の地震力に耐えられるものとして設定されています。

倍率
等級31.5
等級21.25
等級11.0

よって、等級2は、等級1(建築基準法で定める地震力)よりも1.25倍強い地震に耐えられるということになります。

ハゲカケ
ハゲカケ

木造の場合で壁量計算による場合は、等級3が求められます。

品確法に定める免震建築物

免震建築物とは、地盤と建物の間に免震装置を挟むことによって、地震の力が建物に直接伝わらないようにした建築物です。

建物の強度を上げるのではなく、建物に伝わる力を弱めることで地震に対処するのが、免震建築物です。

維持管理・更新の容易性

住宅を長期に使用するためには、壊れたところを取り換えやすくしておく必要があります。

特に設備配管については劣化が見られる箇所になります。

よって、設備配管の維持管理及び更新を容易に行うようにするための対策を講じることが求められています。

基準をおさらいしておきましょう。

以下の基準に適合

・維持管理対策等級(専用配管)の等級3

維持管理対策等級(専用配管)等級3

維持管理対策等級(専用配管)は、これまでの基準と同じく住宅性能表示制度に基づく評価方法基準によるものです。

維持管理対策等級(専用配管)は、等級1から3まであって、等級3が最高等級です。

等級3は、設備配管の維持管理を容易にするため、次の対策が講じられたものです。

  1. 構造躯体及び仕上げ材に影響を及ぼすことなく専用配管の点検及び清掃(排水管に係るものに限る。以下同じ。)を行うことができること。
  2. 構造躯体に影響を及ぼすことなく専用配管の補修を行うことができること。

具体的には、配管がコンクリート内に埋め込まれていないこと、地中に埋設された配管の上にコンクリートが打設されていないこと、壁の中の配管について点検等がしやすいように点検口が設けられていること等が求められています。

なお、長期優良住宅においては、給排水配管のみについて等級3の基準を満たせばいいことになっていますが、ガス配管も同様にすることが望ましいとされています。

省エネルギー対策

住宅を快適かつ経済的に長く使用するためには、エネルギーの使用を抑えることは重要です。

早速、基準をおさらいしてみましょう。

次の基準に適合

・断熱等性能等級5

・一次エネルギー消費量等級6の基準に適合

(ZEH水準相当)

断熱等対策等級は、これまでの基準と同じく住宅性能表示制度に基づく評価方法基準によるものです。

断熱等対策等級は、令和4年9月30日までは等級1から5まででしたが、令和4年10月1日からは、等級6と7が設定されています。

断熱等性能等級は、外壁や屋根、窓などの外皮性能の断熱・日射取得性能を示すものであり、現行の省エネ基準レベルを等級4、平成4年省エネ基準レベルを等級3、昭和55 年省エネ基準レベルを等級2と設定されています。

ちなみに、等級5は、令和4年4月1日から新たに設けられたものであり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が満たすべき基準です。

ハゲカケ
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住宅のさらなる省エネルギー化を図るため、令和4年10月1日からは、断熱等対策等級5及び一次エネルギー消費量等級6への適合が求められています。この基準は、ZEH水準相当になります。国としては、ZEHを新たなスタンダード基準にしようとしていることが伺えます。

なお、現行の省エネ基準のレベル(等級4)で十分かどうかは、別記事にまとめていますので、そちらをご確認ください。

住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること

住宅を数世代に渡り使用するためには、家族構成の変化などに対応する必要があることから、一定程度の広さを確保することが必要です。

住宅の規模については、施行規則(省令)により定められていますが、地方自治体によっては規模を引き下げている場合があります。

ただ、省令に適合していれば問題ありませんので、省令を確認していきます。

(規模の基準)
第四条 法第六条第一項第二号の国土交通省令で定める規模は、次の各号に掲げる住宅の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める面積とする。ただし、住戸の少なくとも一の階の床面積(階段部分の面積を除く。)が四十平方メートル以上であるものとする。
一 一戸建ての住宅(人の居住の用以外の用途に供する部分を有しないものに限る。以下同じ。)床面積の合計が七十五平方メートル(地域の実情を勘案して所管行政庁が五十五平方メートルを下回らない範囲内で別に面積を定める場合には、その面積)
二 共同住宅等(共同住宅、長屋その他の一戸建ての住宅以外の住宅をいう。)一戸の床面積の合計(共用部分の床面積を除く。)が五十五平方メートル(地域の実情を勘案して所管行政庁が四十平方メートルを下回らない範囲内で別に面積を定める場合には、その面積)

一戸建ての住宅は床面積が75㎡以上であればよいものとされています。

一戸建ての住宅で75㎡というのはかなり狭い住宅になりますので、大都市以外では、この基準を満たすことは容易ではないでしょうか。

地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること

住宅は、町を形成する要素の一部です。

長期優良住宅は、将来に渡ってまちなみ等の一部を形成することを踏まえ、地域のまちなみ等との調和が図られている必要があります。

具体的な基準については地方自治体(特定行政庁)が定めることとなっていますので、建設地を所管する特定行政庁のホームページで、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行細則」と検索すると基準を確認することができます。

※規則の名称は自治体によっては異なる場合があります。

概ね次に該当する場合は長期優良住宅の認定が行われないこととされていますが、最終的には各自治体の規則を確認してください。

  • 都市計画法に基づく地区計画等、景観法に基づく景観計画、建築基準法に基づく建築協定、景観法に基づく景観協定、条例による良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に関する制限の内容に適合していない場合
  • 都市計画法に規定する都市計画施設の区域内その他の住宅の建築制限のある区域内にある場合

一つ目は、法令に適合していない場合ですので、適合するよう設計すれば問題ありません。

一方、二つ目の場合は、都市計画施設内(例:都市計画道路)に許可を受けて建てるケースは、長期優良住宅の認定を受けることはできませんので注意が必要です。

維持保全計画が適切なものであること

住宅はどうしても劣化しますので、住宅を長期に使用するには、適切な点検や維持修繕が必要になります。

このことから、長期優良住宅は、維持保全計画を定めることが求められています。

維持保全計画に定めなければならない項目は次のとおりです。

  1. 構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、給水及び排水の設備の部分について、仕様に応じた点検の項目及び時期が定められていること
  2. ①の点検の時期が、竣工時又は直近の点検、修繕若しくは改良から10年を超えないこと
  3. 点検の結果を踏まえ、必要に応じて、調査、修繕又は改良を行うこと
  4. 地震時及び台風時に臨時点検を実施すること
  5. 住宅の劣化状況に応じて、維持保全の方法について見直しを行うこと
  6. 長期優良住宅建築等計画の変更があった場合に、必要に応じて維持保全の方法を変更すること

維持保全計画の作成については、住宅の施工業者等(ハウスメーカーや工務店など)が行ってくれることが多いですが、その計画を実行するのは、建築主であるあなた」です。

また、長期優良住宅の認定を受けるために必要な長期優良住宅建築等計画の中には、維持保全計画を実施するための資金計画が含まれますので、維持保全計画の内容については十分理解しておく必要があります。

点検などを建築主が直接行うことは困難である場合が多いですので、現実的には住宅の施工業者等に依頼することになると思います。

自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること

住宅を長期に使用しようと思っても、そもそもその土地が自然災害のリスクが高ければ、その被害により住宅の使用が困難になってしまいます。

このことから、立地についても制限があります。

具体的な基準については地方自治体(特定行政庁)が定めることとなっていますので、建設地を所管する特定行政庁のホームページで、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行細則」と検索すると基準を確認することができます。

※規則の名称は自治体によっては異なる場合があります。

概ね次に該当する場合は長期優良住宅の認定が行われないこととされていますが、最終的には各自治体の規則を確認してください。

  • 地すべり防止区域内、急傾斜地崩壊危険区域内、土砂災害特別警戒区域内である場合
  • 災害危険区域内、津波災害特別警戒区域内、浸水被害防止区域内であり、必要な措置が講じられていない場合
  • 洪水浸水想定区域内、雨水出水浸水想定区域内、高潮浸水想定区域内、土砂災害警戒区域内、津波災害警戒区域内等で、必要な措置が講じられていない場合

これらの自然災害のリスクについては、各自治体が作成しているハザードマップなどで確認できます。

まとめ

ハゲカケ
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こうして見ると、長期優良住宅の基準は、割と基本的な事項ではないかと思います。

これから住宅を新築しようとする場合は、長期優良住宅の基準をベースに、特に省エネ性能についてはグレードアップするなど、住宅の性能については優先的にコストをかけることをお勧めします。

現行の長期優良住宅の基準についてもっと詳細に知りたい場合はこちらが参考になります。

令和4年10月1日以降の改正内容について詳しく知りたい方は、こちらが参考になります。