基本的に、建築物であれば建築基準法が適用されますが、どんな法律にも例外規定というものがあります。
では、建築基準法が適用されない建築物とはどのようなものがあるのでしょうか。
条文を読み解く
法第3条に規定があります。順番に見ていきましょう。
第三条 この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
二 旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
三 文化財保護法第百八十二条第二項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(次号において「保存建築物」という。)であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
四 第一号若しくは第二号に掲げる建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの
第1項の規定は、歴史的なものだったり、過去の芸術作品だったり、文化財だったり、過去に建築された建築物を現在の法律に合わせようとすると、歴史的、芸術的、文化的価値が損なわれるものについては、建築基準法の規定は適用しませんよ、ということです。
2 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
第2項の規定は、法律の施行の際や、改正法の施行の際にすでに存在する建築物や工事中の建築物については、そのまま存在する分には、法律自体や改正法の規定は適用されませんよということです。
要するに、法律が制定されたり変わったからと言って、すぐにその法律に適合させなくてもいい(既存訴求しない)ということです。
法律が変わった時に、今ある建築物や工事中の建築物に新しい規定に適合するよう求めるのは、経済的に負担が大きいので、このような規定が設けられています。
このように建築時に適法だったものが法律に合わなくなってしまった建築物を「既存不適格建築物」と言います。
ただ、建築基準法に関係が深い消防法では、既存訴求があります。法律が改正されると猶予期間が設けられ、新たな法律の施行から数年以内に新しい規定に適合させなければならなかったりします。
3 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、適用しない。
一 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例を改正する法令による改正(この法律に基づく命令又は条例を廃止すると同時に新たにこれに相当する命令又は条例を制定することを含む。)後のこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用の際当該規定に相当する従前の規定に違反している建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分
二 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域若しくは工業専用地域若しくは防火地域若しくは準防火地域に関する都市計画の決定若しくは変更、第四十二条第一項、第五十二条第二項第二号若しくは第三号若しくは第八項、第五十六条第一項第二号イ若しくは別表第三備考三の号の区域の指定若しくはその取消し又は第五十二条第一項第八号、第二項第三号若しくは第八項、第五十三条第一項第六号、第五十六条第一項第二号ニ若しくは別表第三(に)欄の五の項に掲げる数値の決定若しくは変更により、第四十三条第一項、第四十八条第一項から第十四項まで、第五十二条第一項、第二項、第七項若しくは第八項、第五十三条第一項から第三項まで、第五十四条第一項、第五十五条第一項、第五十六条第一項、第五十六条の二第一項若しくは第六十一条に規定する建築物、建築物の敷地若しくは建築物若しくはその敷地の部分に関する制限又は第四十三条第三項、第四十三条の二、第四十九条から第五十条まで若しくは第六十八条の九の規定に基づく条例に規定する建築物、建築物の敷地若しくは建築物若しくはその敷地の部分に関する制限に変更があつた場合における当該変更後の制限に相当する従前の制限に違反している建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分
三 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
四 前号に該当する建築物又はその敷地の部分
五 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合するに至つた建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分
基本的に建築基準法は既存訴求しないのですが、既存訴求する場合について第3項に規定されています。
条文は長いですが、要約すると次の通りです。
第1号、第2号 | 新たな法令が施行された際に、そもそも従前の法令に違反している場合。 |
第3号、第4号 | 建築物完成後に、増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替えを行 う場合。 |
第5号 | 法令の制定や法令の改正以前に建築されていたけれども、すでに法令に適合している場 合、若しくは新たに法令に適合させた場合 |
第1号、第2号は、そもそも従前の法令に違反して建築されているということは、存在してはいけない建築物なのだから、新たな規定への緩和なんか認められないよねということです。
第3号、第4号は、新たに建築行為等を行うのであれば、既存部分を含めて新たな法律に適合させるべきだよねということです。なお、これには緩和規定がありますが、これはまた別の機会に。
第5号は、一度法令に適合させたんなら、昔の法令の規定に戻すとかなしだよね、ということです。
この規定の使われ方
この規定は、例えば「中古住宅を購入したんだけどちょっと増築したい」という場合によく用いられます。
場合によっては、増築しようとしたら家全体を直さなければならなくなったというようなこともありえます。
その中古住宅が現行法のどのような条項に合っていないのかは、購入する前によく確認しておく必要があります。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】