物が増えちゃって家の中に置く場所がなくなってきたにゃ…
ホームセンターで物置でも買ってきて庭に置こうかにゃ。
という風に考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、安易な考えで物置を設置してしまうと、建築基準法に違反する可能性があります。
物置を家の庭に設置する場合の注意事項について解説します。
物置は建築物になるか?
まずは、物置が建築基準法上の建築物になるかどうかについて解説します。
建築基準法上の建築物の定義については別記事でまとめていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
物置が建築基準法上の建築物になるかどうかのポイントは、次の2点です。
- 屋根及び柱又は壁を有するか
- 土地に定着しているか
物置は物を保管するためにあるのですから、屋根と柱・壁で構成されていますよね。
次に、土地に定着しているかというのは、基礎の有無を言うのではなく、任意かつ随時移動できる状態か否かということです。
物置は物を入れて保管するためにあるので、物を補完したまま好きな時に好きな場所に動かすことはできませんよね。
よって、物置は、建築基準法上の建築物になります。
ただし、平成27年に国土交通省から「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」が発出されています。
この取り扱いについては自治体(特定行政庁)で多少の判断に差異がありますが、概ね奥行が1m以内のもの、高さが1.4m以下のものは建築物とはならないようです。
これについては、お住いの地域の基準を自治体に確認する必要があります。
そもそも建てられる?
物置を建てようとする場合、そもそも敷地内に建てられるか確認する必要があります。
敷地には、都市計画区域外でなければ建蔽率と容積率が設定されています。
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積(≒屋根投影面積(上空から見た建物の面積))の割合です。
容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合です。
容積率で引っかかることはあまりないですが、建蔽率は可能性があります。
住居系の用途地域の場合では、制限が厳しい地域があるため、既存の建築物の建築面積が大きい場合、物置を建築する余裕がない場合があります。
また、敷地境界からの外壁後退距離が設定されている区域もあります。
敷地に設定されている制限をよく確認し、敷地内に建築できる余裕があるか、どのくらいまで可能なのか確認する必要があります。
その物置の屋根(壁がある場合は壁も)は大丈夫?
都市計画区域内で用途地域が設定されている場合は、少なくとも屋根不燃区域(法第22条区域)以上(防火地域・準防火地域)が設定されているはずです。
この場合は、最低でも屋根の構造を不燃材料で葺くか造らなければなりません。
よって、設置しようとする物置の屋根が、敷地に設定されている制限に適合しているか確認する必要があります。
なお、壁については、延焼の恐れのある部分が生じる場合は検討する必要がありますが、既存建築物と物置の合計の面積が500㎡を超えない場合は、既存建築物と物置の間の延焼は検討しなくても問題ありません。
確認申請が必要か?
家の庭に物置を設置する場合に確認申請が必要か否かは、地域及び規模によって変わりますが、まとめると次のとおりとなります。
- 敷地が防火地域又は準防火地域内 → 必要
- 防火地域及び準防火地域以外で物置の床面積が10㎡以下 → 不要
- 都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区外で都道府県が指定する区域外 → 不要
- 物置が法第6条第1項第1号から第3号に該当する建築物の場合 → 必要
なお、前述した「小規模の倉庫」に該当する場合は、建築基準法上の建築物に該当しないので確認申請は必要ありません。
確認申請が必要か否かは、別記事で詳細に解説していますので、そちらをご確認ください。
ホームセンターや建設会社に頼めば大丈夫だよね?
ホームセンターは、物置を建てようとする敷地にどのような制限があるのか調査してくれません。
ホームセンターは単に物置という商品を売っているに過ぎないからです。
また、建設会社に頼んだとしても、建築士事務所を兼ねている建設会社であればしっかり対応してくれると思いますが、そうではない場合は、法適合性までのチェックをしてくれるかは怪しいです。
建設を依頼する際に確認申請まで対応してもらえるか確認しておきましょう。
まとめ
家の庭に安易に物置を建てようとすると、建築基準法に違反する可能性があります。
よって、「小規模な物置」(奥行1m以内又は高さが1.4m以内のものなど。自治体に要確認。)の範囲内で設置することをお勧めします。
「小規模な物置」に該当しないものを設置しようとする場合は、敷地に設定されている規制をよく確認し、必要に応じて確認申請を行った上で(確認申請が不要な場合でも建築基準法令に基づき)、設置してください。
なお、DIYで物置を設置しようとする場合は、別記事をご参照ください。
とある北寄りの地方で、建築職の地方公務員として20年以上の勤務経験があります。
住宅の性能に着目した家づくりの重要性についてお伝えしています。
【保有資格:一級建築士・(特定)建築基準適合判定資格者】