DIYハウスは違法?①【建築基準法の構造規定を確認する】

DIYハウスは違法?①【建築基準法の構造規定を確認する】

よく、DIYの雑誌では、「自分だけの空間を作ろう」とか、最近の情勢から「テレワーク部屋を作ろう」などと、DIYで小屋を作るみたいな記事が載っていたりします。

これって、建築基準法上の問題はないのでしょうか?

今回は、居室として使用するようなDIYハウス(木造)に適用される建築基準法上の規定について、具体的に条文を参照しながら解説していきます。

ハゲカケ
ハゲカケ

長くなるので、【①構造上の規定編】と【②意匠上の規定編】の2つに分けて解説します。

確認申請の必要性

DIYで小屋を作る場合における確認申請の必要性については、建築場所及び規模に応じて次のとおりまとめることができます。

※都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区内又は都道府県の指定区域内の場合

  • 防火地域又は準防火地域内 → 規模に関わらず確認申請が必要
  • 更地に建築(新築) → 規模に関わらず確認申請が必要
  • 既存建築物の付属建築物として建築 → 床面積が10㎡以上の場合は確認申請が必要

まとめると、防火地域又は準防火地域以外であって、10㎡以内の敷地内増築の場合は、確認申請が不要です。

ただし、「確認申請が不要=建築基準法の適用がない」ではありません

確認申請が不要なだけで建築基準法は適用されますので、誤認しないようにしてください。

ハゲカケ
ハゲカケ

ここからは、確認申請が必要ない地域・規模であることを前提として解説していきます。

構造上の規定

基礎

まず、建築物で最初の工事となる基礎ですね。

基礎の規定は、建築基準法施行令第38条になります。

建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
 [略]
3  建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。[略]
4  前2項の規定は、建築物の基礎について国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、適用しない。

要するに、基礎の構造は、「国土交通大臣が定めたもの」とするか、「構造計算によって安全を確かめたもの」とする必要があるということです。

DIY小屋で構造計算をすることは稀でしょうから、「国土交通大臣が定めたもの」とするのが一般的だと思います。

では、どのように定められているのか見てみましょう。

平成12年建設省告示第1347号になります。

建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件

第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度(改良された地盤にあっては、改良後の許容応力度とする。以下同じ。)が1平方メートルにつき20キロニュートン未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、1平方メートルにつき20キロニュートン以上30キロニュートン未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、1平方メートルにつき30キロニュートン以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。

一 次のイ又はロに掲げる建築物に用いる基礎である場合
 イ 木造の建築物のうち、茶室、あずまやその他これらに類するもの
 ロ 延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類するもの

二 地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が1平方メートルにつき70キロニュートン以上の場合であって、木造建築物又は木造と組積造その他の構造とを併用する建築物の木造の構造部分のうち、令第42条第1項ただし書の規定により土台を設けないものに用いる基礎である場合

三 門、塀その他これらに類するものの基礎である場合

四 建築基準法(昭和25年法律第201号)第85条第2項、第5項又は第6項に規定する仮設建築物(同法第6条第1項第二号及び第三号に掲げる建築物を除く。)に用いる基礎である場合
 [略]

基本的に、地盤の許容応力度(強さ)に応じて基礎を選定してくださいということが書いてありますが、第一号から第四号に該当すればこの規定は除外されます。

今回のDIYハウス(居室として使用することを前提)が関係するのは第一号です。

順番が逆になりますが、まず、ロに該当するかですが、これは該当しませんね。

物置、納屋であればいいですが、今回は居室として使用する場合を想定していますので。

次にイについてですが、「その他これらに類するもの」について国土交通省では明確にしていません

※H29.9.4 告示改正の際のパブリックコメントの回答
https://www.city.uji.kyoto.jp/uploaded/attachment/8639.pdf

どのような用途で建築するかによりますが、少なくとも趣味部屋とか作業部屋などの用途では「その他それらに類するもの」にはならないと思われます

よって、原則として、告示の仕様に沿った基礎が必要になりますので、くい基礎、べた基礎、布基礎のいずれかにする必要があります。

上部構造

上部構造については、構造を問わない共通部分として施行令第37条から39条まで、木造部分として施行令第40条から第49条に規定されています。

構造部材の耐久・屋根ふき材等

  • 施行令第37条:構造部材の耐久
  • 施行令第39条:屋根ふき材等

施行令第37条は、構造上主要な部分の耐久性に係る規定になっていて、腐食等しにくい措置を施した材料とする必要がありますよということが規定されています。

施行令第39条は、屋根ふき材及び外装等について風・地震により剥落しないようにする必要がありますよということが規定されています。

これらについては、法令において具体的な施工方法が示されていませんので、建築主において適切に施工方法を選定する必要があります。

木造部分の規定に係る適用の範囲

まず、建築基準法施行令第40条において、これらの規定の適用の範囲が規定されています。

この節の規定は、木造の建築物又は木造と組積造その他の構造とを併用する建築物の木造の構造部分に適用する。ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物又は延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物については、適用しない。

ここでも基礎の解説の際に出てきた表現がありますね。

同様に、 少なくとも趣味部屋とか作業部屋などの用途では「その他それらに類するもの」にはならないと思われます。

壁量

少し条文が飛びまして、施行令第46条です。

壁量規定ですね。

この条文を気にされる方も多いと思うのですが、実は、平屋で50㎡以内であれば、壁量とか1/4分割法とか関係ないです。

条文上は、バランスよく配置されていればいいというだけになります。

条文を確認してみましょう。

構造耐力上主要な部分である壁、柱及び横架材を木造とした建築物にあつては、すべての方向の水平力に対して安全であるように、各階の張り間方向及びけた行方向に、それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。

2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する木造の建築物又は建築物の構造部分については、適用しない。 [略]

3  床組及び小屋ばり組には木板その他これに類するものを国土交通大臣が定める基準に従つて打ち付け、小屋組には振れ止めを設けなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

4  階数が2以上又は延べ面積が50平方メートルを超える木造の建築物においては、第1項の規定によつて各階の張り間方向及びけた行方向に配置する壁を設け又は筋かいを入れた軸組を、それぞれの方向につき、次の表1の軸組の種類の欄に掲げる区分に応じて当該軸組の長さに同表の倍率の欄に掲げる数値を乗じて得た長さの合計が、その階の床面積(その階又は上の階の小屋裏、天井裏その他これらに類する部分に物置等を設ける場合にあつては、当該物置等の床面積及び高さに応じて国土交通大臣が定める面積をその階の床面積に加えた面積)に次の表二に掲げる数値(特定行政庁が第88条第2項の規定によつて指定した区域内における場合においては、表二に掲げる数値のそれぞれ1.5倍とした数値)を乗じて得た数値以上で、かつ、その階(その階より上の階がある場合においては、当該上の階を含む。)の見付面積(張り間方向又はけた行方向の鉛直投影面積をいう。以下同じ。)からその階の床面からの高さが1.35メートル以下の部分の見付面積を減じたものに次の表三に掲げる数値を乗じて得た数値以上となるように、国土交通大臣が定める基準に従つて設置しなければならない。 [略]

壁量計算は第4項になるのですが、前置きとして、「階数が2以上又は延べ面積が50平方メートルを超える場合は」となっています。

この規模を作るのでなければ、この規定を気にする必要はありません。

そうすると、施行令第46条の規定は、

  • 筋交い又は壁をバランスよく配置する
  • 床組みと小屋はり組に火打ち等を(告示の基準通りに)設け、小屋組には振れ止めを設ける

この2点だけになります。

基本的な構造・材料

壁量については平屋で50平方メートル以内の場合は気にしなくていいことが分かりました。

施行令第41条から45条までは必要な仕様を守ればいいので、解説は割愛します。

  • 施行令第41条:木材
  • 施行令第42条:土台及び基礎
  • 施行令第43条:柱の小径
  • 施行令第44条:はり等の横架材
  • 施行令第45条:筋交い

構造上の規定のまとめ

構造上の規定については、やはりと言うべきか、基礎がネックになりますね。

告示の規定に合わせて基礎を設けるか、別の基礎にする場合は構造計算する必要があります。

基礎がないものや、基礎について全く検討せずブロックなどの独立基礎を使用しているものは、建築基準法上アウトです。

基礎さえクリアできれば、平屋で50平方メートル以内の場合であれば壁量計算も必要ありませんので、他の規定はなんとかなるかもしれませんね。

長くなりますので、今回は構造上の規定で終わりにして、意匠上の規定については記事を分けて解説したいと思います。