住宅の省エネルギー対策としての遮熱材・遮熱塗料の効果とは?【結論:効果は限定的】

住宅の省エネルギー対策としての遮熱材・遮熱塗料の効果とは?【結論:効果は限定的】

住宅の省エネルギー対策のひとつとして、断熱性能の向上の重要性について度々お伝えしてきました。

一方で、巷では「遮熱」という言葉で省エネ性能の向上を謳っている建材として、遮熱材遮熱塗料というものも見られます。

遮熱材や遮熱塗料は、主に、屋根や外壁などの外側に使用されます。

今回は、遮熱材や遮熱塗料について、その効果を解説していきたいと思います。

現行の省エネ基準では評価対象ではない

住宅を含めた建築物の省エネ性能を定めた法律に「建築物省エネ法」(略称)があります。

この法律では、建築物の省エネルギー基準が定められているのですが、その基準において「遮熱」は評価対象となっていません

遮熱材を使用したとしても、現行の省エネ基準上の評価(UA値、BEI値)は上がりません。

日射の反射率は色で決まる?

環境省のH21年度環境技術実証事業ヒートアイランド対策技術分野実証実験結果報告書によると、次の結果が示されています。

  • 同じ明度の場合は、一般塗料に比べて遮熱塗料の方が反射率が高い
  • 明度が高いほど、一般塗料と遮熱塗料の反射率の差は小さい
  • 明度の低い遮熱塗料は明度の高い一般塗料より反射率は劣る

この結果から、屋根の遮熱効果を高めたいのであれば、遮熱塗料の使用よりも明度の高い色にする方が効果が高いと言えます。

夏はメリット・冬はデメリット?

遮熱は、太陽からの熱を反射することで、室内への熱の流入を抑えるものです。

よって、夏は、遮熱によって室内への熱の流入を抑えることができるため、冷房負荷の低減にはつながる可能性があります。

一方で、冬は、太陽の熱を反射してしまうので住宅の屋根や外壁が太陽の熱で暖まりませんので、暖房負荷の低減には繋がりません

チェックポイント

「HEAT20 設計ガイドブック」では、屋根の防湿層として、一般的に使用される白色の透湿防水シートと、シート状遮熱材を使用した場合の比較(東京・大阪・鹿児島)を行っていますが、断熱性能が低い場合は、鹿児島では若干の冷房負荷の低減が見られたものの、断熱性能が平成4年基準レベル以上になるとほぼその効果はなくなり、逆に暖房負荷が増加する結果となっています。

遮熱材や遮熱塗料の使用はよく考えて

現状では、遮熱材や遮熱塗料の効果は低いものと考えられます。

巷に出回っている建材においては、「断熱材の〇㎜に相当する」などと謳われている場合もありますが、明確な根拠がないことも多いです。

ただ、Low-Eガラスでも日射取得型と日射遮蔽型があるように、方位や使用する住宅の部分によっては効果を発揮することがあるかもしれません。

遮熱材や遮熱塗料を使用しようとする場合は、その効果をよく見極めて使用してください。